第47回理学療法士国家試験PM67
問題
嚥下で誤っているのはどれか。
1. 食塊が舌によって咽頭に送られる過程を口腔期という。
2. 食塊が咽頭粘膜に触れると、嚥下反射が誘発される。
3. 嚥下反射のときに喉頭蓋が後方に倒れる。
4. 輪状咽頭筋が収縮すると、食塊が食道に入る。
5. 食塊が食道に達すると、食道の蠕動運動が生じる。
解答:4
解説
1.口腔期とは、食塊が咽頭へと送られる時期である。
2.食塊が咽頭粘膜に触れると、嚥下反射が起こる。
3.嚥下反射では喉頭蓋が後方に倒れる。
4.輪上咽頭筋が弛緩すると、食塊は食道に入る。
5.食塊が食道に到達すると、食道の蠕動運動が起こる。
類似問題:第46回理学療法士国家試験AM66
問題
嚥下で正しいのはどれか。
1. 口腔内の食塊は反射運動で咽頭へ送られる
2. 軟口蓋が挙上すると咽頭と鼻腔の通路が開く
3. 喉頭蓋が引き上げられて気道が閉鎖される
4. 食塊が食道に入る時期に呼吸が促進される
5. 食道期の食塊移動は蠕動運動による
解答:5
解説
1.口腔内の食塊は随意運動によって咽頭へ送られる。
2.軟口蓋が挙上すると、咽頭と鼻腔の通路が閉鎖される。
3.喉頭が前上方へ挙上し、喉頭蓋が下方へ倒れることで気道が閉鎖される。
4.食塊が食道に入る時期には呼吸が停止する。
5.食道期における食塊移動は蠕動運動によって行われる。
嚥下運動とは
嚥下運動とは、口腔内(口の中)で食塊(食べ物の塊)を形成し、食道・胃へ送る一連の運動のことです。簡単に言えば、食べ物を飲み込む動作ということになります。嚥下運動は口腔期(こうくうき)・咽頭期(いんとうき)・食道期(しょくどうき)の3段階に大きく分類され、それぞれで各部位が特徴的な動きをします。
嚥下運動のリハビリは言語聴覚士の分野となるため、理学療法士の国家試験で問われるのは簡単な解剖学・運動学がメインとなっています。
国家試験で問われる!
- 嚥下は口腔期・咽頭期・食道期の3つに分けられる
嚥下運動の段階と各部位で生じる運動
口腔期(こうくうき)
口腔期では、口の中で食べ物を細かくして完成した食塊を咽頭へ送ります。口腔期における基本的な運動は舌で行われ、舌を挙上することにより後方へ送り出します。
ぜひ自分で行ってみるとわかりやすいのですが、食べ物を飲み込む際は舌が上方向に動き、硬口蓋・軟口蓋に当たるのが実感できるはずです。
舌は随意運動を行うことができる、舌下神経支配の横紋筋です。
つまり、嚥下における口腔期は随意運動であるということです。
食塊が咽頭に送られる時には、呼吸が抑制され息を吸うことができません。
国家試験で問われる!
- 口腔期→舌を挙上させて食塊を咽頭へ
- 舌は随意運動ができる、舌下神経支配の横紋筋
- 咽頭への送り出しをする際は呼吸が抑制(口腔期では呼吸可=噛みながら息はできるが、飲み込むときは息ができない)
- 口腔期は随意運動
咽頭期
咽頭期では、咽頭から喉頭へ食塊を送るとともに、鼻腔の閉鎖や気道の閉鎖が起こります。また、輪上咽頭筋が弛緩することで、食道へと食塊が移動します。
特に喉頭蓋が正常に気道を塞ぐことができないと、気道及び肺へと食塊や液体が侵入してしまい、誤嚥性肺炎などを引き起こします。年齢が若ければ咳嗽(=せき)によって気道への侵入を防ぐ事ができますが、咳反射・筋力が衰えている高齢者の場合、気づかないケースもしばしば発生します。
舌は後方へ倒れる事により咽頭から口腔へ逆流しないように働き、軟口蓋は鼻腔へ食塊が侵入しないように上方移動して口腔と鼻腔を閉鎖します。鼻腔への通り道が閉鎖されるので、呼吸も停止します。
国家試験で問われる!
- 舌→後方へ倒れて口腔と咽頭を閉鎖
- 軟口蓋→上方移動して口腔と鼻腔を閉鎖
- 喉頭蓋→後方に倒れて気道に入らないよう閉鎖
- 輪上咽頭筋→弛緩することで食道へ食塊を通す
- 呼吸→鼻腔からの通り道が閉鎖&気道の閉鎖によって停止する
食道期
食道期では、食道括約筋の蠕動運動によって食塊が胃へと送られます。このときには、咽頭・気道も開通しており、呼吸が可能です。
国家試験で問われる!
- 食塊は蠕動運動によって胃へ運ばれる
- 呼吸は可能
各運動の随意・不随意と関与する神経
口腔期・咽頭期・食道期の運動について、それぞれの随意・不随意が理学療法士国家試験では頻繁に問われる。簡単に覚える事ができるので、以下の表を暗記しておくとよい。
神経について問われることは少ないが、舌の感覚・運動についてはよく問われるのでしっかりと覚えておきたい。