第52回理学療法士国家試験PM58
問題
胃の解剖について正しいのはどれか。
1.胃底は胃の下方をいう。
2.胃の左縁を小弯という。
3.食道と胃の境に噴門が位置する。
4.大弯は肝胃間膜によって肝臓と結合している。
5.胃酸を分泌する腺は幽門前庭に多くみられる。
解答:3
解説
1.胃底とは胃の上方を指している。
2.小弯とは胃の右側の縁のことである。噴門から幽門までの弯曲部分が小弯である。
3.噴門とは食道と胃の境である。
4.大弯とは胃の下側の縁のことである。大弯から出ている大網は一部が横行結腸につながっており、胃結腸間膜と呼ばれている。
5.胃酸を分泌する腺(主に壁細胞)は胃体部に多く存在している。
胃の解剖
胃は大きく分けて3つの部分に分けられている。胃底部は胃の上側、胃体部が胃の中心部、幽門部が胃の下側となっている。胃の右縁は小弯、左縁は大弯と呼ばれる。
胃底部
胃底部には噴門腺と呼ばれる分泌器官が多く存在している。噴門腺にある細胞は副細胞で、粘液を分泌することにより胃液の強力な酸性から胃を保護している。
胃体部
胃体部には胃底腺と呼ばれる細胞が多く分布している。胃底腺が多いのは胃底部ではないので間違えないように注意したい。胃底腺には、主細胞・副細胞・壁細胞の3つがあり、副細胞は前述している通りである。
主細胞はペプシノーゲンと呼ばれる物質を分泌する。ペプシノーゲンはタンパク質の分解に作用する。
壁細胞は塩酸を出す。胃液の酸性が強いのはこの塩酸による影響が大きい。塩酸にはいくつかの効果があり、ペプシノーゲンの活性化・タンパク質分解の補助・食塊の酸性化を担っている。
幽門部
幽門部には幽門腺と呼ばれる分泌器官が存在する。幽門腺には副細胞が分布しており、その作用は前述している通り粘液の分泌による粘膜の保護である。
他にも、G細胞が多く分布している。G細胞はガストリンの分泌を促進する。ガストリンには胃酸の分泌を増やす作用があるので、ガストリンが増えると結果的には胃酸が増える。国家試験においては「胃液の分泌を促進」という表現が多い。
国家試験で問われる!
- 胃底部:噴門腺→副細胞(粘液分泌)
- 胃体部:胃底腺→主・副・壁細胞(タンパク質分解・粘液分泌・塩酸分泌)
- 幽門部:幽門腺→副細胞(粘液分泌)、G細胞:ガストリン分泌
胃液の分泌に関して
胃液の分泌に関して、国家試験でよく問われるポイントは促進・抑制である。不随意ではあるが、人間の胃液分泌量は体内の状態によって制御されている。以下には、ポイントとなる部分を紹介する。
胃液分泌を促進する要素
胃液分泌を促進する要素には以下のような例がある。
- 視覚刺激
- 胃に食物が胃に入ることによる物理的な伸展刺激
- ガストリンの分泌
食物が胃に入る前から胃液の分泌は始まっており、物理的な刺激によっても促進される。
胃液分泌を抑制する要素
胃液分泌を抑制する要素には以下のような例がある。
- 胃内pHの低下
- 交感神経の緊張
- 十二指腸への酸性物質の侵入
- セクレチンの分泌
胃の中のpHが低くなるということは、より酸性に傾いていることを意味している。また、十二指腸への酸性物質の侵入も胃液が多すぎることを意味する。これらの場合は胃液の分泌が抑制される。
食事をする時をイメージすればわかりやすいかもしれないが、交感神経が優位になり過緊張の状態では胃液分泌は抑制される。
セクレチンとガストリンの関係については後述する。
セクレチンとガストリンの関係
国家試験においては、ガストリン・セクレチンは頻出する。どちらも胃液分泌の問題で登場することが多いため、それぞれのはたらきを把握しておこう。
ガストリン
ガストリンの主な作用は「胃液分泌の促進」である。前述したように、ガストリンは幽門部に多いG細胞から分泌される。ガストリンは胃底部に多い壁細胞に働きかけることで塩酸(≒胃液)の分泌を促進させる。
セクレチン
セクレチンの主な作用は「胃液分泌の抑制」である。セクレチンは十二指腸にあるS細胞から分泌される。セクレチンが胃体部に多い壁細胞へと働きかけることで塩酸(≒胃液)の分泌を抑制させる。この他にも、セクレチンは胃の運動を抑制する効果・ガストリンの分泌を抑制する効果をもつ。
類似問題に挑戦!
第52回理学療法士国家試験AM66
問題
胃液の分泌を促進するのはどれか。2つ選べ。
1.胃壁の伸展
2.胃内pHの低下
3.交感神経の緊張
4.ガストリンの分泌
5.十二指腸への酸性内容物の流入
解答:1,4
解説
1.胃壁が伸展されると胃液の分泌は促進される。
2.胃内pHが低下すると胃液分泌は抑制される。
3.交感神経優位では胃液分泌は抑制される。
4.ガストリンの分泌によって胃液分泌は促進される。
5.十二指腸へ酸性物質が侵入すると胃液分泌は抑制される。