第50回理学療法士国家試験PM32
問題
膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。
1. 前方引き出しテスト
2. Barlow テスト
3. N-テスト
4. Ortolani テスト
5. Patrick テスト
解答:1 3
解説
1.前方引き出しテスト→膝前十字靱帯のテスト
2.Barlow テスト→発育成股関節形成不全のテスト
3.N-テスト→膝前十字靱帯のテスト
4.Ortolani テスト→発育成股関節形成不全のテスト
5.Patrick テスト→股関節と仙腸関節のテスト
類似問題:第48回理学療法士国家試験AM29
問題
膝関節前十字靱帯損傷で異常所見がみられるのはどれか。2つ選べ。
1. Lachman test
2. McMurray test
3. Thompson test
4. 軸移動テスト(pivot shift test)
5. 後方引き出しテスト(posterior drawer test)
解答:1 4
解説
1.Lachman test(ラックマンテスト)→膝前十字靱帯のテスト
2.McMurray test(マクマレーテスト)→内側・外側半月板損傷のテスト
3.Thompson test(トンプソンテスト)→アキレス腱断裂のテスト
4.軸移動テスト(pivot shift test)→膝前十字靱帯のテスト
5.後方引き出しテスト(posterior drawer test)→膝後十字靱帯のテスト
整形外科的テスト
整形外科的テストとは、骨・筋・神経などの疾患や異常部位を特定することを目的に、基本的には徒手を用いて行う検査である。理学療法士国家試験で出題される整形外科テストにも多くの種類があり、トーマステストなど、名称と検査内容が全く関係ないこともしばしば。
ぜひ、周囲の人と実施しながら検査と名称を紐付けて覚えておきたい。1点問題・3点問題のどちらにも出題される可能性があり、出題確率も非常に高くなっている。ここからは例題に出ていたテストを紹介する。
前方引き出しテスト
前方引き出しテストは、前十字靱帯(ACL)の損傷を確認するためのテストである。測定肢位は背臥位である。
- 患者の足の甲を固定し、両手で脛骨を把持する。
- 下腿を前方へ引き出す。
- 前方に動く、疼痛がある場合→陽性、損傷している可能性あり
後方引き出しテスト
後方引き出しテストは、後十字靱帯(PCL)損傷の検査である。測定肢位は背臥位である。
- 膝を90°曲げた状態で脛骨を把持する。
- 後方へ力を加えて動揺性を確認する。
- 後方への不安定性や疼痛が生じた場合→陽性、損傷の可能性あり
Lachman(ラックスマン)テスト
ラックマンテストは、前方引き出しテストと同様、前十字靱帯(ACL)損傷の検査である。方法は若干異なるが、ACLの検査であるため、前方引き出しテストとセットで出題されることも多い。測定肢位は背臥位、膝を軽度(20~30°)屈曲させた状態である。
- 大腿遠位部と下腿近位部(=膝の近位と遠位)を把持する。
- 膝関節を屈曲位に保ったまま、膝周囲筋に力が入っていないことを確認する。
- 下腿を後方から前方へと引き出す。
- 脛骨の動揺性が大きいとき→陽性、損傷の可能性あり
- end feel(エンドフィール)の消失→陽性、損傷の可能性あり
Pivot shift(ピボット シフト) テスト(軸移動テスト)
Pivot shiftテストは前十字靱帯(ACL)の損傷を確認するためのテストである。別名、軸移動テストともいう。検査肢位は背臥位、膝を軽度(20~30°)屈曲させた状態である。
- 片方の手で患者の下腿を把持し、内旋させる。
- もう片方の手は下腿の上外側後方へ当てる。
- 膝を外反させ、脛骨の前方押し出しをしながら膝を屈曲させていく。
- 屈曲30°付近でガクッと脛骨の後方滑りが起こったとき→陽性で前十字靱帯損傷の可能性あり
McMurray(マクマレー)テスト
マクマレーテストは、外側側副靱帯及び半月板損傷の検査である。検査肢位は背臥位である。半月板損傷の代表的な検査であり、国家試験にも頻出するため確実に覚えておきたい。
- 片側股関節を屈曲させる。
- 下腿を内旋・外反しながら膝を伸展させていく。
- 疼痛が生じる→陽性、外側側副靱帯や半月板損傷の可能性あり
Nテスト(Jerk test:ジャークテスト)
Nテストは別名ジャークテストとも呼ばれる、前十字靱帯(ACL)損傷の検査である。検査肢位は背臥位で、膝関節を90°屈曲させた状態から始める。
- 患者の膝関節周囲で腓骨頭を母指で触診する。
- 腓骨頭を前方へ押し出し、外反と下腿の内旋を加えながら膝関節を伸展させる。
- 屈曲20°~40°くらいで脛骨外側顆が前内方へ亜脱臼する→陽性、前十字靱帯損傷の可能性あり
Thompson(トンプソン)テスト
トンプソンテストはアキレス腱断裂の検査である。検査肢位は腹臥位である。
- 腹臥位で膝関節を90°くらい屈曲させる。
- 腓腹筋の筋腹を手指で把持し、つまむ。
- 足関節の底屈が生じる→アキレス腱はつながっているので断裂はしていない
- 足関節の底屈が生じない→アキレス腱断裂の可能性あり
Barlow(バーロウ)テスト
バーロウテストは発育性股関節形成不全および先天性股関節脱臼の検査である。検査肢位は背臥位で両側股関節を90°屈曲した状態である。
- 母指を小転子、中指と環指を大転子に当てる。
- 大転子を上方に押す。
- クリック音を触知できる→陽性、脱臼していた股関節が整復されている
- 次に、小転子を後方へ押す。
- 骨頭が後方へ脱臼する→陽性、3と同様、発育性股関節形成不全および先天性股関節脱臼の可能性あり
Ortolani(オルトラーニ)テスト
オルトラーニテストは発育性股関節形成不全および先天性股関節脱臼の検査である。検査肢位は背臥位、両側股関節90°屈曲・膝関節完全屈曲位である。
- 母指を大腿の内側へ、その他の指は大腿の外側へ当てる。
- 股関節を長軸方向へ軽く押す。
- 軽いクリック音を触知する→陽性の可能性あり
- そのまま、股関節を外転・外旋させ、中指で大転子を下から押し上げる。
- 骨頭が整復されてクリック音を触知する→陽性、発育性股関節形成不全および先天性股関節脱臼の可能性あり
Patrick(パトリック)テスト
パトリックテストは股関節・仙腸関節病変の検査である。検査肢位は背臥位で、患側の足部を反対側の膝上に起き、股関節屈曲・外転・外旋位とする。
- 患側の膝内側を下方に押す。
- 股関節や仙腸関節に疼痛が出現→陽性、股関節・仙腸関節の変性疾患・炎症の可能性あり
国家試験で問われる!
今回取り上げた整形外科的テストは国家試験にも頻出であるが、基本的にはテスト名・疾患・方法の関係が理解できていれば、深いことはわからなくても得点できる。簡単にまとめたので、ぜひ以下は覚えておこう。
- 前方引き出しテスト→前十字靱帯
- 後方引き出しテスト→後十字靱帯
- ラックスマンテスト→前十字靱帯
- Pivot shift テスト→前十字靱帯
- マクマレーテスト→外側側副靱帯・半月板
- Nテスト→前十字靱帯
- トンプソンテスト→アキレス腱
- バーロウテスト→発育性股関節形成不全・先天性股関節脱臼
- オルトラーニテスト→発育性股関節形成不全・先天性股関節脱臼
- パトリックテスト→股関節・仙腸関節