第45回理学療法士国家試験AM72
問題
膝関節で正しいのはどれか.
1. 外側側副靱帯は屈曲位で緊張する。
2. 最終伸展時に脛骨の外旋が起こる。
3. 外側半月は外側側副靱帯と結合する。
4. 大腿骨軸と脛骨軸とは軽度内反している。
5. 後十字靱帯は大腿骨の顆間窩後方に付着する。
解答:2
解説
1.外側側副靱帯は膝伸展位で緊張する。
2.最終伸展時には脛骨が大腿骨に対して外旋する。
3.外側半月板は外側側副靱帯と結合していない。
内側半月板は内側側副靱帯と結合している。
4.大腿骨軸と脛骨軸は解剖学的に軽度外反している。
5.後十字靱帯は大腿骨の顆間窩前方に付着している。
膝関節の解剖
まずは、膝関節周囲の解剖について図解していく。基本的な解剖が理解できていないと、イメージしづらく、問題のインプットに時間を要してしまう。以下に紹介しているものは最低限の暗記項目になるので、繰り返し学習して確実に抑えておきたい。
膝関節前面
まずは膝関節の前面から紹介していく。
↓膝関節の前面図
膝関節を前面から見ると、前十字靱帯(ACL)が前側に位置している。この他、内側・外側の半月板も確認することができる。X線像などを確認すると、膝関節裂隙なども捉えることができるはずだ。なお、外側・内側側副靭帯・膝蓋骨は省略しているので、次に紹介する後方・矢状面の画像で確認しておこう。
国家試験で問われる!
- 前十字靱帯(ACL)の付着は、大腿骨外側顆後内側面→脛骨前顆間区 である。
- 後十字靱帯(PCL)の付着は、顆間窩前内側→脛骨後顆間区外側 である。
膝関節後面
次に後方からの解剖を紹介していく。
↓膝関節の後方
後方からも半月板などを確認することができる。外側半月板は外側側副靱帯と結合していないことも確認しておこう。この他にも、膝窩筋腱や関節包なども確認することができるが、今回は省略している。
国家試験で問われる!
- 外側半月板は外側側副靱帯と結合していない
- 内側半月板は内側側副靭帯と結合している
膝関節矢状面断
最後に外側からの矢状面断を紹介する。
↓膝関節の矢状面断(左の内側から)
矢状面断では、膝蓋骨との位置関係も把握することができる。勘違いしているケースで最も多いのは、ACLが上前方に付着しているというものである。ACLは上後方に付着しているため間違わないようにしたい。上前方に付着しているのは、どちらかといえばPCLである(顆間窩前内側)。
なお、膝蓋骨と大腿骨・脛骨の間には脂肪組織や膝蓋上包などがある(今回は省略している)。
この画像を見ると分かるように、大腿四頭筋の腱部分(≒膝蓋腱)は脛骨(脛骨粗面)に付着している。つまり、膝蓋腱は大腿四頭筋の力を脛骨へと伝える役割を担っている。
国家試験で問われる!
- 膝蓋靱帯は大腿四頭筋の力を脛骨へと伝えている。
膝関節に付着している主な靱帯について
国家試験レベルで必要になる膝関節周囲の靱帯には、
- 前十字靱帯(ACL : anterior cruciate ligament)
- 後十字靱帯(PCL : posterior cruciate ligament)
- 内側側副靱帯(MCL : medial collateral ligament)
- 外側側副靱帯(LCL : lateral collateral ligament)
がある。
今回の設問及び膝靱帯の問題でポイントになるのは、各靱帯が緊張する膝関節の肢位である。前十字靱帯(ACL)に関しては少々特殊なケースもあるが、基本的には以下の表を暗記しておけば正答することができる。
靱帯/膝の肢位 | 屈曲 | 伸展 | 内旋 | 外旋 |
ACL | 初期のみ緊張(=ほぼ弛緩) | 終期のみ緊張(=ほぼ弛緩) | 緊張 | 弛緩 |
PCL | 緊張 | 弛緩 | 緊張 | 弛緩 |
MCL・LCL | 弛緩 | 緊張 | 文献による | 緊張 |
ACLは屈曲初期と伸展最終期のみ緊張する(※1)。理学療法士としては必須の知識だが、国家試験問題として出題されることはほぼ無い。そのため、点数を取ることだけに特化するのであれば、まずACLの内外旋・PCL・LCL・MCLをしっかりと覚えよう。
参考
(※1 膝靱帯損傷のリハビリテーション : J-STAGEより)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/50/6/50_453/_pdf/-char/ja
膝関節の内反・外反
正常の膝関節であれば、基本的には軽度外反している(=内側に凸)。以下の画像を参照するとわかりやすいが、大腿骨軸と脛骨軸を交差させて確認する大腿脛骨角(FTA : femoro-tibial angle)の正常値が170~180°であることも併せて覚えておくと、理解が深まるはずだ。
なお、内反・外反については逆に覚えてしまうこともあるので注意が必要である。内反は外側に凸であり、外反は内側に凸である。つまり、O脚は過度な内反、X脚は過度な外反であると説明する事ができる。
国家試験で問われる!
- 正常の膝関節は軽度外反(内側に凸)している
- 大腿脛骨角(FTA)の正常値は170~180°である
- 内反→外に凸
- 外反→内に凸
- O脚は過度な内反、X脚は過度な外反
終末強制回旋運動(SHM : screw home movement)
終末強制回旋運動(SHM : screw home movement)とは、膝関節を屈曲させた時、最終域において脛骨が外旋(外回り)する現象である。脛骨が外旋することで、膝関節が最も安定した状態になるとされている。
SHMは膝関節屈曲120°くらいの位置から始まると報告されており(※2)、最終的には15°ほど外旋する。なお、内側半月板と内側側副靭帯は結合しているため、可動性としては外側が大きい。つまり、内側を軸にして外側が動くことで外旋が生じている。
参考
(※2 非荷重時の膝関節自動伸展運動におけるスクリューホームムーブメントの動態解析 : J-STAGEより)
国家試験で問われる!
- 終末強制回旋運動とは、膝関節を屈曲させた最終域において、脛骨が外旋する運動のことである。
半月板の役割
膝関節には内側半月板と外側半月板がある。半月板の主な役割は荷重の分散・安定性の向上(膝関節の適合性を高める)であり、脛骨にかかる負荷が一点集中しないように力を外側へ逃している。
国家試験で問われる!
- 半月板の主な役割は荷重の分散・安定性の向上である。
類似問題に挑戦!
第44回理学療法士国家試験PM4
問題
膝関節で正しいのはどれか.
1. 生理的に内反している。
2. 前十字靱帯は膝で最も強い靱帯である。
3. 内側側副靭帯は内反によって緊張する。
4. 半月板は関節面の適合性を良好にする。
5. 膝蓋腱は大腿四頭筋の力を腓骨に伝える。
解答:4
解説
1.膝関節は生理的に外反している。
2.膝関節で最も強い靱帯は膝蓋靱帯である。
3.内側側副靭帯は外反で緊張する。
4.半月板は関節面の適合性を良好にしている。
5.膝蓋腱(≒大腿四頭筋腱)は大腿四頭筋の力を脛骨へと伝えている。