第50回理学療法士国家試験PM90
問題
骨折の名称と部位の組合せで正しいのはどれか。
1. Monteggia 骨折一一一一上腕骨
2. Cotton 骨折一一一一一一橈骨
3. Malgaigne 骨折一一一一骨盤
4. Jefferson 骨折一一一一一大腿骨
5. Bennett 骨折一一一一一脛骨
解答:3
解説
1.Monteggia骨折は尺骨の近位1/3骨折と橈骨の脱臼である。
2. Cotton骨折は脛骨と腓骨の3果骨折である。
3.Malgaigne骨折は骨盤の垂直骨折である。
4.Jefferson骨折は環椎の破裂骨折である。
5.Bennet骨折は第1中手骨の骨折である。
各骨折の概要
理学療法士国家試験には、沢山の骨折名が登場する。主に整形外科学分野の問題であることが多く、大半は骨折の名称と基本的な概要を把握していれば正答することができる。骨折部位を覚える上で、前提条件として解剖学の知識が必要になるため、骨の解剖が把握できていない場合はそちらの学習を優先することをオススメする。ここでは、Jefferson骨折・Malgaigne骨折・Monteggia骨折・Colles骨折・Smith骨折・Bennett骨折・Dupuytren骨折・Cotton骨折の8種類を紹介する。
Jefferson(ジェファーソン)骨折
Jefferson(ジェファーソン)骨折は環椎(第1頚椎)の骨折である。前弓と後弓の各2箇所、合計4箇所の骨折であり、突発的な疼痛が発生する。スポーツ時などに生じる急激かつ大きな外力が原因となることが多い。別名は環椎破裂骨折。脊髄に大きな損傷が生じることは少ないとされているが、椎骨の骨折であるため危険性は非常に高い。
国家試験で問われる!
- Jefferson骨折は環椎の破裂骨折
Malgaigne(マルゲーニュ)骨折
Malgaigne(マルゲーニュ)骨折は骨盤の垂直骨折である。垂直骨折というのは、骨折線が地面に対して垂直に走ったり(=縦方向に骨折線が入る)、骨同士が垂直方向にずれたり(=関節面がスライドするイメージ)する骨折のことである。骨盤は内臓器を支えていることもあり、この骨折では内臓及び血管や神経の損傷が生じやすい。大量出血傾向で、予後は比較的不良である。
国家試験で問われる!
- Malgaigne骨折は骨盤の垂直骨折
- 大量出血の傾向がある
- 内臓器・神経・血管を損傷しやすい
- 予後不良
Monteggia(モンテジア)骨折
Monteggia(モンテジア)骨折は尺骨の近位1/3骨折(骨幹部という覚え方でもOK)に橈骨の脱臼が併発した骨折である。手掌を着いて転倒した時に起こりやすい。神経損傷が発生することはほぼ無いが、観血的な整復が必要になるケースは多い。
伸展型では橈骨が掌側へ脱臼し、屈曲型では橈骨が背側へ脱臼する。
この他、手掌を着いて転倒した際に生じやすい骨折には、後述するColles骨折がある。
国家試験で問われる!
- Monteggia骨折は尺骨の骨折と橈骨の脱臼
- 手掌を着いて転倒した際に生じやすい
Colles(コーレス)骨折
Colles(コーレス)骨折は橈骨の遠位端骨折に骨片の背側転移が併発した骨折である。正中神経麻痺を合併することがある。高齢者に多い骨折である橈骨遠位端骨折とはこのColles骨折とSmith骨折のことを指している。Monteggia骨折と同様、手掌面を地面に着いて転倒した際に受傷しやすい。
Colles骨折と対象的な骨折としてはSmith骨折がある。内容が似ているので、以下と比較しながら混同しないように気をつけたい。
国家試験で問われる!
- Colles骨折は橈骨の遠位端骨折と骨片の背側転移
- 手掌を着いて転倒した際に受傷しやすい
Smith(スミス)骨折
Smith(スミス)骨折は橈骨の遠位端骨折と骨片の掌側転移が併発した骨折である。転倒した際、手関節掌屈位で地面に手をつくと受傷しやすい。Colles骨折と同様、正中神経麻痺を併発することがある。
Colles骨折との違いは、受傷肢位と骨片が転移する方向である。以下にまとめているので、間違わないように再確認しておこう。
国家試験で問われる!
- Smith骨折は橈骨の遠位端骨折と骨片の掌側転移
- 手背を着いて転倒した際に受傷しやすい
Bennett(ベネット)骨折
Bennett(ベネット)骨折は第1中手骨の骨折である。第1中手骨骨折のうち、特に基部(根元部分)に発生したものをBennett骨折といい、長母指外転筋の牽引力によって第1中手骨が引かれることで発生する。関節内骨折であり、第1中手骨の脱臼を伴いやすい。整復ができない場合には、観血的治療を試みるケースもある。
国家試験で問われる!
- Bennett骨折は第1中手骨の基部骨折
- 長母指外転筋の牽引力によって生じる
Dupuytren(デュピュイトラン)骨折
Dupuytren(デュピュイトラン)骨折は内果と外果の骨折である。病態通り、別名「2果骨折」と呼ばれることもある。果部骨折の中では比較的頻度が高く、前距腓靱帯の損傷が併発するケースも多い。骨転移が少なければ、外固定での整復で治療することもできる。
国家試験で問われる!
- Dupuytren骨折は内果と外果の2箇所の骨折
- 前距腓靱帯の損傷が併発しやすい
Cotton(コットン)骨折
Cotton(コットン)骨折はDupuytren骨折に追加で後果(脛骨の内側関節面部分)の骨折が併発した骨折である。合計で3箇所の骨折が生じていることから、別名「3果骨折」と呼ばれることもある。果部骨折の約2割を占め、後果の骨折が関節面の1/3を超える場合は予後不良となる可能性が高い。
国家試験で問われる!
- Cotton骨折は内果・外果・後果の合計3箇所の骨折