第49回理学療法士国家試験AM55
問題
側頭葉にあるのはどれか。 2 つ選べ。
1.角回
2.歯状回
3.帯状回
4.海馬傍回
5.中心前回
解答:2 4
解説
1.角回(かくかい)は頭頂葉にあるので誤り。
2.歯状回(しじょうかい)は側頭葉にある。
3.帯状回(たいじょうかい)は大脳皮質の内側にある大脳辺縁系なので誤り。
4.海馬傍回(かいばぼうかい)は側頭葉にある。
5.中心前回(ちゅうしんぜんかい)は前頭葉にあるので誤り。
理学療法士国家試験に出題される脳の問題について
理学療法士国家試験には、脳・神経系の問題が必ず出題される。実地問題・専門問題両方に出ているため、今回紹介する脳の解剖学的事項は必須の知識となる。
脳・神経系の問題を解く際に必要となる知識は、大まかに分けて「解剖・役割」の2つに大別される。役割を理解することで、発生している症状を理解することにつながるのである。しかしながら、その部位がどこにあるのかを正確に把握していないと、そもそも覚えることが難しい。
近年では脳画像を用いた推論的な問題も頻出しているので「Wernicke野→言語理解」のような単純暗記で、脳・神経系の問題を正答するのは難しくなっている。
全体像の把握(外側)
まずは国家試験に出題されやすい部位を脳の外側から確認していく。
中心溝(central sulcus)【ローランド溝(rolando溝)】
中心溝(ローランド溝)は大脳半球の外側面にある溝である。前頭葉と頭頂葉を隔てており、前後には一次運動野(中心前回)と一次体性感覚野(中心後回)がある。
外側溝(lateral sulcus)【シルビウス溝(sylvius溝)】
外側溝(シルビウス溝)は中心溝と同様、大脳半球の外側面にある溝である。前頭葉及び頭頂葉と側頭葉を隔てている。
頭頂後頭溝
頭頂後頭溝は大脳半球の内側にある(一部は外側)溝である。頭頂葉と後頭葉を隔てているが、国家試験に出題される頻度はローランド溝・シルビウス溝と比較すると少ない。
前頭葉(frontal lobe)
前頭葉(frontal lobe)は中心溝よりも前側・外側溝よりも上側に位置している。人間においてはよく発達しており、一次運動野(中心前回)は対側の随意運動を支配している。下部にはBroca野があり、言語活動における発語を主に司っている。
頭頂葉(parietal lobe)
中心溝よりも後側・頭頂後頭溝よりも前側・外側溝よりも上側に位置している。中心溝の後方には一次体性感覚野(中心後回)があり、対側の感覚を司っている。頭頂後頭溝の上方には角回があり、半側空間無視(Unilateral spatial neglect:USN)の病巣部位として国家試験にも頻出している。
側頭葉(temporal lobe)
外側溝よりも下側に位置している。画像には記載していないが、聴覚の中枢(聴覚野)がある。内側には海馬傍回がありそのさらに内側には歯状回と海馬がある。海馬や歯状回はいずれも外側から確認することはできない。側頭葉にはWernicke野があり、言語活動における言語理解を担当している。
海馬傍回
海馬傍回はその名の通り、海馬体の周囲に位置している組織である。記憶の形成と想起において重要な役割を担っており、パペッツ回路の一部でもある。画像は矢状断面図であり、青い部分が海馬傍回である(実際の色とは異なる)。
後頭葉(occipital lobe)
頭頂後頭溝よりも後方に位置している。聴覚の中枢があり、視覚の伝導路は最終的に後頭葉へ至る。国家試験においては、聴覚の中枢があること以外で登場する機会はほぼない。
全体像の把握(内側)
次に脳内側の概要を紹介する。ここではこの後の類似問題で登場する帯状回と紡錘状回について記載している。
帯状回(cingulate gyrus)
帯状回は前頭葉から頭頂葉にかけて脳梁と平行に走っている帯状溝と脳梁に挟まれた部分である。大脳辺縁系の各部位を連絡する役割を担っている部位である。
紡錘状回(Fusiform gyrus)
紡錘状回は側頭葉の下部に位置している。詳細な役割は判明していないが、近年の研究によると、文字から色の認識をしている過程において紡錘状回が強く働くことが明らかになっている。
参考
" Neuroimaging has shown that two regions in the fusiform gyrus of the temporal lobe become active when grapheme-colour synaesthetes perceive letters that evoke sensations of colour "
IMAGING OF CONNECTIVITY IN THE SYNAESTHETIC BRAIN より引用
意訳:Neuroimaging によると、色を知覚させるような文字を見た時に側頭葉と紡錘状回が強く働くことが分かっています。
※Neuroimaging(=脳機能イメージング:脳の精神活動を視覚的に見ることができる検査の総称)
国家試験で問われる!
- 前頭葉と頭頂葉を隔てる→中心溝(ローランド溝)
- 前頭葉・頭頂葉と側頭葉を隔てる→外側溝(シルビウス溝)
- 頭頂葉と後頭葉を隔てる→頭頂後頭溝
- 中心前回(一次運動野)がある場所→前頭葉
- 中心後回(一次体性感覚野)がある場所→頭頂葉
- Broca野がある場所→前頭葉
- Wernicke野がある場所→側頭葉
- 角回がある場所→頭頂葉
- 聴覚中枢→側頭葉
- 視覚中枢→後頭葉
類似問題に挑戦!
第48回理学療法士国家試験PM53
問題
前頭葉に含まれるのはどれか。2つ選べ。
1.角回
2.紡錘状回
3.中心前回
4.Broca野
5.Wernicke野
解答:3 4
解説
1.角回は頭頂葉にある。
2.紡錘状回は側頭葉にある。
3.中心前回は前頭葉にある。
4.Broca野は前頭葉にある。
5.Wernicke野は側頭葉にある。
第46回理学療法士国家試験PM52
問題
頭頂葉にあるのはどれか。
1.角回
2.帯状回
3.歯状回
4.海馬傍回
5.中心前回
解答:1
解説
1.角回は頭頂葉にある。
2.帯状回は側頭葉にある。
3.歯状回は側頭葉にある。
4.海馬傍回は側頭葉にある。
5.中心前回は前頭葉にある。