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68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。【第53回理学療法士国家試験AM1】

第53回理学療法士国家試験AM1

問題

68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。術前評価として歩行分析を行ったところ、右立脚期にDuchenne歩行が観察された。

この患者に対して行う検査として重要度が低いのはどれか。

1. 筋力検査

2. 形態計測

3. 疼痛検査

4. 反射検査

5. 関節可動域検査

解答:

解説

1.国家試験で出題される筋力検査とは、いわゆるMMT(Manual Muscle Test:徒手筋力検査法)のことである。Duchenne歩行が観察されているため、中殿筋を中心とした股関節外転筋の筋力低下が考えられる。そのため、行うべき検査としては妥当である。

2.形態計測とは、主に四肢長計測周径計測を意味している。人工股関節置換術行う上で、脚長差は術後の歩行に大きな影響を及ぼすため、検査として妥当である。

3.疼痛検査とは、主にNRS(Numerical Rating Scale)FRS(Face Rating Scale)VAS(Visual Analogue Scale)を意味している。筋力低下が起こっていることや、変形性股関節症を発症していることから、疼痛の検査は妥当である。

4.ここでいう反射検査とは、膝蓋腱反射を意味していると推察できる(大腿四頭筋が股関節運動に関連していることから)。この他にも反射検査は多数存在するが、いずれにおいても変形性股関節症は末梢・中枢神経障害が中核症状ではないので優先度は低い。

5.関節可動域検査とは、一般的にROM(Range of Motion)測定と呼ばれる検査を意味している。人工股関節置換術では、術法によっては筋肉の損傷が生じ、関節可動域に制限が生じることもある。そのため、術後発生した関節可動域制限が元々のものなのか/手術によって発生したものなのかを検討するため、術前に評価しておく必要がある。

 

変形性股関節症の概要

変形性股関節症は関節軟骨の変性摩耗が原因となって生じる、股関節の器質的障害である。病期が進むに連れて変形が著しくなり、日常生活に大きな影響を及ぼすこともある。理学療法士国家試験においては重要となるポイントがあるので、得点するだけであればそこまで苦労はしないはずだ。

変形性股関節症の初期では、正座時階段昇降時などに疼痛が発生する。

進行期から末期になると、関節可動域制限水腫歩行困難疼痛のさらなる増強などが生じる。

レントゲン像のチェックポイントとしては、骨棘の形成関節裂隙の狭小化骨嚢胞の出現・関節面の不平滑(なめらかではない)などが挙げられ、特に骨棘関節裂隙の狭小化は容易に発見することができる。

日常生活では、体重のコントロールしゃがみ動作の禁止・階段や坂道の非推奨・長距離歩行の制限などを行い、変形性股関節症が進行しないように阻止する。それでも症状の改善が見られない場合や、患者の強い希望があれば、人工股関節置換術を行う。

 

変形性股関節症に対するリハビリテーション

ここからは変形性股関節症に対するリハビリテーションについて紹介していく。

物理療法

基本的には温熱療法超音波療法干渉波療法を選択する。変形性股関節症置換術の術後では、体内に金属が入っているので注意が必要である。

運動療法

運動療法では膝のROM訓練自動車こぎ運動水中歩行練習などを行う。中でも大腿四頭筋セッティング(パテラセッティング)は等尺性収縮であるため、早期から実施することができる。

ADL指導

和式便所を利用しないこと・あぐらの禁止・正座の禁止・シャワー椅子の活用・体重のコントロールなどを行う。

 

国家試験で問われる!

  • 早期から高負荷の運動を行うことは少なく、ある程度の運動制限が伴う。段階的に運動が可能となる。荷重に関しては人工股関節置換術(THA)であれば、早期から可能である。
  • 運動制限は手術による筋出力の低下に対するものであり、脱臼のリスクを最小限に食い止めることが最大の目的である。

 

類似問題に挑戦!

第52回理学療法士国家試験AM17

問題

右人工股関節置換術(後方侵入)後の患者の靴下の着脱動作として正しいのはどれか。2つ選べ。

解答:2 4

解説

1.人工股関節置換術後は脱臼のリスクが高まってしまうため、深屈曲を行ってはいけない。

2.後方進入法における禁忌動作は「(深い)屈曲・内転・内旋」動作である。そのため、軽度屈曲・外旋動作であれば特に問題ない。

3.股関節屈曲角度は特に問題ないが、内旋動作が入っている。脱臼のリスクが高まってしまうので適切ではない。

4.股関節の深屈曲・内転・内旋動作のいずれも含まれていないため、行っても特に問題はない。

5.股関節の深屈曲動作が入っているので、脱臼のリスクが高まってしまう。適切ではない。

国家試験で問われる!

  • 後方進入法の禁忌動作は「深屈曲・内転・内旋
  • 前方進入法の禁忌動作は「伸展・外転・外旋

 

手術前後の整形外科的テスト

変形性股関節症でも整形外科的テストを用いて評価を行う事がある。以下の記事を参考にして、基本的な評価は実施できるようにしておきたい。

参考【整形外科的テスト】膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。

第50回理学療法士国家試験PM32 問題 膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。 1. 前方引き出しテスト 2. Barlow テスト 3. N-テスト 4. Ortolani テ ...

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