第53回理学療法士国家試験AM19
問題
生後4ヶ月の乳児。検診で股関節の異常を指摘された。来院時に右股関節の開排制限を認めたため、股関節のエックス線単純検査を行った。
股関節の図を示す。臼蓋角はどれか。
1.a
2.b
3.c
4.d
5.e
解答:5
解説
1.1は大腿脛骨角(NSA)である。NSAは大腿骨体と大腿骨頭がなす角である。
2.2はセンターエッジ角(CE角)である。CE角は大腿骨の骨頭中心を通る垂線と臼蓋外側縁がなす角である。
3.3のような計測方法は存在しない。
4.4のような計測方法は存在しない。
5.5が臼蓋角(sharp角)である。臼蓋角は臼蓋嘴(きゅうがいし)と両側涙痕を結んだ線がなす角度である。
臼蓋角(sharp-angle)
臼蓋角は両側の涙痕を結ぶ線と涙痕・臼蓋外側縁(臼蓋嘴:きゅうがいし)を結ぶ線がなす角である。単語で暗記するのは難しいかもしれないが、画像を見て涙痕と臼蓋外側縁を覚えておけばそこまで複雑なものではない。
乳幼児の正常値は33-38°ほどとなっており、これ以上角度が大きくなると(=臼蓋外側縁が上がり、臼蓋が浅くなる)発育性股関節形成不全と判断できる。
なお、成人男性の正常値は38-42°、成人女性の正常値は43-45°となっている。
成長と性別 | 臼蓋角の正常値 |
乳幼児 | 33-38 |
成人男性 | 38-42 |
成人女性 | 43-45 |
国家試験で問われる!
- 臼蓋角:両側の涙痕を結ぶ線と涙痕・臼蓋外側縁を結ぶ線がなす角
- 乳幼児で38°以上なら発育性股関節形成不全の可能性が高い
発育性股関節形成不全の鑑別には、画像の他にも整形外科的テストが用いられる。以下の記事ではBarlowテストとOrtolaniテストを紹介している。
-
参考【整形外科的テスト】膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。
第50回理学療法士国家試験PM32 問題 膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。 1. 前方引き出しテスト 2. Barlow テスト 3. N-テスト 4. Ortolani テ ...
続きを見る
CE角(center-edge angle)
CE角(センターエッジ角)は、大腿骨頭の中心を通る垂線と骨頭中心と臼蓋外側を通る線がなす角である。骨頭の位置によって角度が変わることから、大腿骨の亜脱臼の状態を判別する際に利用される。
正常値は25-30°となっており、角度が減少すればするほど骨頭が外側に偏位していることになるため亜脱臼の程度が大きくなっていると判断できる。
国家試験で問われる!
- CE角:大腿骨頭の中心を通る垂線と骨頭中心と臼蓋外側を通る線がなす角
- CE角の正常値は25-30°である
大腿骨頸体角(NSA:neck shaft angle)
大腿骨頸体角は大腿骨頭の中心を通る線と大腿骨体を通る線がなす角である。別名:頸体角ともいう。頸体角と大腿骨に関しては以下の記事で詳しく紹介している。正常値は約120-130°である。
-
参考大腿骨について正しいのはどれか。【第49回理学療法士国家試験午後52】
第49回理学療法士国家試験PM52 問題 大腿骨について正しいのはどれか。 1.頸部は後捻している。 2.骨幹部は後弯している。 3.外側顆は内側顆より大きい。 4.骨頭窩は骨頭の外側にある。 5.大 ...
続きを見る
国家試験で問われる!
- 頸体角:大腿骨頭の中心を通る線と大腿骨体を通る線がなす角
- 頸体角の正常値は120-130°である