第49回理学療法士国家試験PM52
問題
大腿骨について正しいのはどれか。
1.頸部は後捻している。
2.骨幹部は後弯している。
3.外側顆は内側顆より大きい。
4.骨頭窩は骨頭の外側にある。
5.大転子は小転子より近位にある。
解答:3 or 5
解説
1.大腿骨の頸部は前捻している。
2.大腿骨の骨幹部は前捻している。
3.大腿骨の外側顆は内側顆よりも大きい。
4.骨頭窩は大腿骨骨頭の内側にある。
5.大腿骨の大転子は小転子よりも上方に位置している。
大腿骨の解剖学的構造
大腿骨の解剖は理学療法士国家試験にも頻出している。解剖学的な事項はほぼ暗記問題であるため、覚えておかなければ正答することはできないが、文字だけではなく画像としてイメージすることができていれば、さほど難しくはない。ここからは大腿骨の解剖学的な特徴について、画像を利用しながら解説していく。
大腿骨における各部分の分類
まずは大腿骨の各部分を大まかに分類するための呼称を紹介していく。
大腿骨は大きく分けて4つの部分に分類されている。
骨頭部
まずは骨頭部である。その名の通り大腿骨の骨頭があり、寛骨とともに股関節を形成している。変形性股関節症などでは骨頭の部分に変性が生じることもある。
変形性股関節症に関しては、以下の問題も参考にするとよい。
-
参考68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。【第53回理学療法士国家試験AM1】
第53回理学療法士国家試験AM1 問題 68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。術前評価として歩行分析を行ったところ、右立脚期にDuchenne ...
続きを見る
頸部
次は頸部である。「大腿骨頚部骨折」という骨折があるように、大腿骨の中でも少しだけ細くくびれている部分が頸部に該当する。高齢者の3大骨折にはこの頸部での骨折が含まれている。
骨幹部
骨幹部は大腿骨体の部分に該当する。強度は高く、大転子・小転子には多くの筋肉が付着している。内転・外転筋群や大腿四頭筋なども骨幹部に起始・停止部をもっており、粗線などは国家試験でも出題される事がある。
顆部
顆部は骨幹部とまとめて表現されることもある。内側上顆と外側上顆にも多くの筋肉が付着しており、起始停止を覚える際には何度も登場することとなる。最下部前面には膝蓋面があり、膝蓋大腿関節を形成している。
膝蓋大腿関節については以下の記事で詳しく解説している。
-
参考膝関節で正しいのはどれか.【第45回理学療法士国家試験AM72】
第45回理学療法士国家試験AM72 問題 膝関節で正しいのはどれか. 1. 外側側副靱帯は屈曲位で緊張する。 2. 最終伸展時に脛骨の外旋が起こる。 3. 外側半月は外側側副靱帯と結合する。 4. 大 ...
続きを見る
大腿骨における各部位の名称
ここからは大腿骨の詳細な部位を紹介していく。特に大転子や小転子・大結節・大腿骨内側上顆・大腿骨外側上顆などは筋肉の起始停止でも頻出するのでイメージできるようにしておきたい。
大転子・小転子
大転子は大腿骨上外側にある出っ張りである。体表からも容易に触知することができ、下肢長計測でもチェックポイントになっている。中殿筋や小殿筋・深層外旋六筋などの殿部筋や、外側広筋などの大腿部の筋が付着している点もポイントである。
小転子は内側にある出っ張りのことであり、大転子とは対をなしている。体表から触知することはできないが、腸腰筋などの主要筋の停止部になっている。
大腿骨外側上顆・内側上顆
大腿骨外側上顆には腓腹筋や足底筋が主に付着している。体表からも容易に触知することができ、下肢長計測時にはチェックポイントとなっている。
大腿骨内側上顆には腓腹筋の内側頭や内転筋などが付着している。体表からも容易に触知することができる。
国家試験で問われる!
- 大転子は殿筋群や大腿外側の筋が不付着している大腿骨の出っ張りである。
- 小転子は腸腰筋が付着している大腿骨内側の出っ張りである。
- 大腿骨外側上顆には腓腹筋や足底筋が付着している。
- 大腿骨内側上顆には内転筋群などが付着している。
大腿骨の前捻角
正常大腿骨の骨頭部分は、骨軸を軸に前方へやや捻転(回転)している。正確には内側顆と外側顆の中心を結んだ線に対して、大腿骨頭軸が交わる角が前捻角である。成人では約10°~15°あり、小児においては約30°ほどあるとされている。
国家試験で問われる!
- 前捻角とは外側顆と内側顆の中心を結んだ線と、捻転している骨頭軸とがなす角である。
- 大腿骨の前捻角は成人で10°~15°、小児で約30°である。
大腿骨の頚体角(NSA)
大腿骨は骨頭部分が骨幹部に対してやや臼蓋方向(≒内側)に傾いている。大腿骨頸部軸と骨幹部軸がなす角を頚体角(NSA:neck shaft angle)という。正常では約120°~130°となっており、それよりも大きい場合は外反股、小さい場合は内反股と判断することができる。
国家試験で問われる!
- 頚体角(NSA)とは、大腿骨骨幹部軸と頸部軸がなす角である
- 頚体角の正常値は約120°~130°である
- FTAが過大であると外反股、過小であると内反股と判断できる
類似問題
股関節に関しては以下の問題も参考になるため、確認しておこう。
-
参考68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。【第53回理学療法士国家試験AM1】
第53回理学療法士国家試験AM1 問題 68歳の女性。変形性股関節症。発症して10年が経過し、右人工股関節置換術を施行することになった。術前評価として歩行分析を行ったところ、右立脚期にDuchenne ...
続きを見る
-
参考【整形外科的テスト】膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。
第50回理学療法士国家試験PM32 問題 膝前十字靱帯断裂の評価で適切な検査法はどれか。2 つ選べ。 1. 前方引き出しテスト 2. Barlow テスト 3. N-テスト 4. Ortolani テ ...
続きを見る